曽山哲人・金井壽宏著『クリエイティブ人事〜個人を伸ばす、チームを活かす』、
光文社新書、2014年
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内容
次は人事です。この本の舞台であるベンチャー企業で求められる人事と、自律した教員で構成される大学組織で求められる人事は質的に違うため、大学組織では書いてある内容の多くは活用できないと思います。が、新しい事業を行おうとしている福祉機関には、少なからず参考になる部分があるのではないでしょうか。
曽山氏は今をときめく株式会社サイバーエージェントの人事部長であり、社員のやる気を引き出し事業を成功させるための多数の方法を実行してきています。主な人事制度として15も制度があることが驚きでした。例えば「ジギョつく(事業をつくろうの略)」:内定者を含む全社員が応募できる新規事業プランコンテスト。グランプリ受賞者は賞金100万円を受け取り、希望すれば子会社社長としてプランを事業化できる(p.32)。例えば「キャリチャレ(キャリアチャレンジ制度の略)」:社内異動公募制度。現在の所属部署で一年間以上働いている人は誰でも、上司に断ることなく、希望する部署への異動を願い出ることができる(p.33)。例えば「マカロン(macalon)パッケージ」:「ママがCA(評者注:サイバーエージェント)で長く働くための諸制度。妊活休暇(月1日)、妊活コンシェル(専門医などのカウンセリング)、子どもが発病したときなどに在宅勤務を認めるキッズ在宅勤務、子どもの学校行事や誕生日などの日に休めるキッズデイ休暇など(p.35)。どれもワクワクするような制度です。
でもこの本の面白さは制度の数々というよりも、人事部長になったばかりのやや空回り気味だった曽山氏が、社員の信頼を得るためにどのように自己変革して実践していったかの内実が書かれていることにあります。いくら制度やシステムが豊富でも、それを血の通ったものにするのかどうかは、結局「人」にかかっているということなのでしょう。そんな曽山氏の哲学については、『最強のNo.2』(株式会社文字工房燦光、2013年)で詳細に展開されています。
目次
はじめに 【序章】人事は何のために存在しているのか 【第一章】ベンチャーに「人事本部」が生まれるとき 【第二章】コミュニケーション・エンジン―― 矛盾の中に解を見出す 【第三章】個人と組織が成長する仕組み 【第四章】進化する人事 【第五章】人事クリエイターの旅 あとがき
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