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今回は需要が高いと思われるスーパービジョンの本紹介の第2弾です。


浅野正嗣編『ソーシャルワーク・スーパービジョン実践入門〜職場外スーパービジョンの取り組みから〜、鰍ンらい、2011年


内容

 なぜか時期によって、このホームページのなかでスーパービジョンの本を紹介しているページビュー数が多くなることがあります。きっと、どこかの学校でスーパービジョンについての課題が出された際に、インターネットで調べてヒットするからではないでしょうか。
 ということで、今回は需要が高いと思われるため、スーパービジョンの本紹介第2弾です。
 

 浅野先生達が書かれたこの本は、理論編と実践編からなる二部構成です。とりわけ興味深いのは、「第2章 職場外スーパービジョンの試み」と「第3章 スーパービジョンの質的研究」です。
 第2章では、浅野先生達が実際に立ち上げて実施されている「ソーシャルワーク・サポートセンター名古屋」の活動をベースに、そこでの実際のスーパービジョンの流れや取り組みの詳細が展開されています。また第3章では、上記で実施したスーパービジョンがスーパーバイジーにどのような影響を与えたかを明らかにすることを目的に、インタビュー・データを修正版・グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析しています。このように、実際の取り組みだけに留まらず、その効果を明らかにしていることはとても重要だと思いました。
 またこの本では、初級ソーシャルワーカー、中堅ソーシャルワーカー、熟達ソーシャルワーカーのスーパービジョンのあり方について、ステップごとに述べられている点も一読に値します。拙著の初心者、中堅者、ベテランソーシャルワーカーでどのように実践能力が変容するか、という点とも大いにリンクしていると思いました。
 私は隣の県でソーシャルワーカーを行っていたので、浅野先生のスーパービジョンを受けたことはありませんでしたが、できることなら受けてみたかったですね。

目次


第T部 理論編

第1章 社会福祉領域のスーパービジョン
 はじめに
 第1節 スーパービジョンの概要
 第2節 社会福祉領域に於けるスーパービジョンの位置づけ
 第3節 文献にみるスーパービジョンのとらえ方
 第4節 ソーシャルワーカーの困難性―医療ソーシャルワーク実践から―

第2章 職場外スーパービジョンの試み
 はじめに
 第1節 スーパービジョン実践の枠組みについて
 第2節 SSNによる職場外スーパービジョンの実際
 第3節 SSNによる職場外スーパービジョンの特色
 第4節 SSNによる職場外スーパービジョンの効果と限界

第3章 スーパービジョンの質的研究
 第1節 職場外個別スーパービジョンを通したスーパーバイジーのソーシャルワーク実践に関する認識変化のプロセス
 第2節 スーパーバイジーのソーシャルワーカーとしての自己理解の深化のプロセス

第4章 スーパーバイザー養成の現状
 はじめに
 第1節 ソーシャルワーク領域のスーパーバイザー養成
 第2節 介護支援専門員におけるスーパーバイザー養成

第T部まとめ―スーパービジョンの構造化と養成プログラムの標準化

第U部 実践編

第5章 初級ソーシャルワーカーのスーパービジョン
はじめに
第1節 スーパーバイジーの視点
第2節 具体的な事例をもとにしたスーパービジョンの内容
第3節 スーパーバイザーの視点

第6章 中堅ソーシャルワーカーのスーパービジョン
はじめに
第1節 スーパーバイジーの視点
第2節 具体的な事例をもとにしたスーパービジョンの内容
第3節 スーパーバイザーの視点


第7章 熟達ソーシャルワーカーのスーパービジョン
 はじめに
 第1節 スーパーバイジーの視点
 第2節 具体的な事例をもとにしたスーパービジョンの内容
 第3節 スーパーバイジーのふり返り
 第4節 スーパーバイザーの視点

第U部のまとめ―職場外におけるスーパービジョンの実際―
鼎談―スーパーバイザー体験を通して―




植田寿之著『対人援助のスーパービジョン〜より良い援助関係を築くために〜』、中央法規、2005年


内容

 この本は、実践的にスーパービジョンを学ぶ際に役立ちます。すなわち、スーパービジョンに関する個々の項目の説明後に、演習課題がついており、その演習を行うなかで多様な気づきが促されるようになっているからです。
 そして、演習課題の設定には、工夫が施されています。例えば、「演習1-1」(p.32)では、業務上のストレスを感じたときの対処法を書き出すのですが、@個人レベル、A集団レベル、B組織レベル、C組織を超えたレベルでの方法と、自ずと考える視点が多様になるように設定されてあります。同じように、「演習3-3」(p.110)で事例の課題を整理する際のシートには、@組織の問題、A職員集団の問題、BA個人の問題、C主任の問題、Dその他の問題に書き分けるようになっています。このように、この本にそって勉強しワークに取り組むことにより、取り組んだ人のスーパービジョンになるのです。
 適切なスーパーバイザーがいればベターですが、そうでない場合も多いのではないでしょうか。そんな時の強い味方として、実践者や学生むけに活用してほしい1冊です。
 また、第4章の「スーパービジョンにおけるパラレルプロセスの適用」では、スーパーバイザーとバイジーとの関係を援助者と利用者との関係とパラレルであることについて展開しており、好ましくないパラレルプロセスと好ましいパラレルプロセスの記述には関心をそそられます。同時に、メアリー・ゲイル・フローリー=オーディら著(2010)『新しいスーパービジョン関係〜パラレルプロセスの魔力〜』福村出版の「第8章 パラレルプロセスについて再考する」(ただし上級者向け)を読むと、この点についてより理解が深まることでしょう。


目次


序章 スーパービジョンは行われていたのか

第1章 スーパービジョンはなぜ必要なのか

第2章 スーパービジョンはどのような形で行うのか

第3章 スーパービジョンをどのように行うのか

第4章 関係を通してスーパービジョンを行う

第5章 スーパービジョン体制を整える



村田久行著『援助者の援助〜支持的スーパービジョンの理論と実際〜』、川島書店、2010年

内容

 スーパーバイザーをどのようにして養成するのか。この問いに答えてくれるのがこの本です。とりわけ、どのようにしたら核となる「支持的スーパービジョン」が効果的に行えるのかを、事例をまじえて詳細に展開しています。  
 例えばこんなかんじに。1.バイジーの紹介(年齢、スーバービジョンを受ける動機)、2.スーパーバイザー(身体的、精神的状況)、3.会話の内容(逐語録+所々に筆者のコメント)、4.バイザーの感想と反省+筆者の総合コメント。このように、いくつものスーパービジョンの事例におけるバイザーの対応や声かけに対して、ここでどうすれば良かったのかというコメントがはさまれています。これもまた、紙上におけるバイザーのためのスーパービジョンなのでしょう。
 本書を貫く考え方は、援助概念と業務概念の対比です。援助概念とは「患者・クライエントの苦しみを和らげ、軽くし、なくすること」であり、業務概念とは「組織・機関の提供するプログラムと手続きを、正確さ・効率・安全性を保ちつつ履行すること」(p.21)です。そして、「『業務』を仕事の目的とするのではなく、『業務』を『援助』のための道具として位置づけること」(p.24)を提唱しています。支持的スーパービジョンのスーパーバイザーは、常にバイジーに対し、仕事で「援助」が実現しているかどうかを振り返ることを促しています。そのためには、まずバイザー自身がバイジーに「援助」を行わなくてはならないのでしょう。
 その視点より一貫して書かれているため、とても温かい1冊だと感じました。

 

目次


はしがき
序章
第1部:支持的スーパービジョンの理論と構造

第1章 援助者の援助:支持的スーパービジョンの対人援助理論

第2章 対人援助関係性の解明

第3章 支持的スーパービジョンの構造とスーパービジョンプロセス

第2部:支持的スーパービジョンのスーパーバイザー育成

第4章 支持的スーパービジョンの教育

第5章 スーパービジョン研究の理論動向

あとがき



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