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今回はスーパービジョンに関する本の紹介です。


福山和女編著『ソーシャルワークのスーパービジョン〜人の理解の探求〜』、ミネルヴァ書房 、2005年

内容

 近々、スーパービジョンについて話す機会があり、何冊かの本に目を通しました。今回は、そのなかからお薦めの3冊を紹介します。

 この本は、言わずとしれたスーパービジョンの大家、福山和女先生の編著によるものです。ベテランの医療ソーシャルワーカーのお話を聞いていると、日本の医療ソーシャルワーカーの力量形成を促してきた重要な契機が、福山先生によるスーパービジョンであったことがわかりました。それほど、大きな影響力のある方です。
 この本のなかで特に面白さを感じたのは、実践編の第1章から第6章までです。家族支援機関に赴任したばかりの新人ソーシャルワーカーが、所長のスーパービジョンを受けながら複雑なケースに対応する経過を、随所で理論を交えながら物語ふうに展開してあります。スーパービジョンって、ここまで詳細で丁寧に行われるものなのかということ、心理社会的アプローチとはこのような活用の仕方をされるのかということが、よく伝わってきます。事例では新人ワーカーが成長していく様子が描かれていますが、それを読んでいる読者も一緒にスーパーバイズされていく気分です。
 理論編では、FKモデル(福山先生のモデル)について述べられている第11章、「スーパービジョンのチェックリスト」が掲載されている第9章など、学ぶ点が多かったです。
 スーパービジョンについて知りたい方は、具体的なイメージを持つためにも、まずは目を通すと良い本だと思いました。
 

目次

実践編
第1章 ソーシャルワーク支援の導入期
第2章 介入開始
第3章 問題の変革への働きかけ
第4章 変革期
第5章 安定期
第6章 終結期
第7章 コンサルテーション

理論編
第8章 スーパービジョンをとりまく状況
第9章 日本におけるスーパービジョンの理論的枠組み
第10章 アメリカにおけるソーシャルワーク・スーパービジョンの発達
第11章 スーパービジョン・ツール
第12章 二層のスーパービジョン体制の存在




深澤道子・江幡玲子編『現代のエスプリ395〜スーパービジョン・コンサルテーション実践のすすめ』、至文堂、2000年

内容

 月刊のムック誌である現代のエスプリ」は、心理・教育・社会・医療など様々な分野のトピックスを扱っていますが、興味があるテーマの時に購入しています。
 2000年には「スーパービジョン・コンサルテーション実践のすすめ」がテーマでした。内容で興味深かったのは、社会福祉分野だけでなく他分野のスーパービジョンについて述べられてある点です。多様な分野の専門家が書いているのですが、いずれもソーシャルワーカーが活躍する分野でもあるので、参考になります。
 また、「スーパービジョンの課題」では、スーパーバイザー自体に焦点が当てられている「スーパーバイザーの養成とトレーニング」「スーパーバイザー自身の問題」、そしてスーパービジョンとコンサルテーションの違いについて述べている「スーパービジョンとコンサルテーションと情報提供」は一読の価値があります。
 あわせて、「スーパーバイザーが得られない場合」に掲載されている自己チェックリストは、ソーシャルワーカーも活用可能なため、自分自身を振り返るには良いツールではないでしょうか。


目次

プロローグ/スーパービジョンとは
座談会/スーパービジョン・コンサルテーション実践のすすめ
スーパービジョンの課題
 スーパーバイザー養成とトレーニング
 スーパーバイザー自身の問題
 スーパービジョンとコンサルテーションと情報提供
実践と対応
 心理療法におけるスーパービジョン
 社会福祉実践におけるスーパービジョン
 医療機関におけるスーパービジョン
 「児童相談」におけるスーパービジョン
 「子育て支援」のスーパービジョン
 公的機関におけるスーパービジョン
 司法機関におけるスーパービジョン
 教育現場におけるスーパービジョン
 犯罪被害者支援におけるスーパービジョン
 危機、災害状況におけるコンサルテーション
 高齢者にかかわる人のためのスーパービジョン
 ボランティア活動に関するスーパービジョン
 ピアカウンセリングにおけるスーパービジョン
 「思春期」と思春期の問題に関わる人のために
対談/スーパーバイザーが得られない場合



塩村公子著『ソーシャルワーク・スーパービジョンの諸相〜重層的な理解〜』、中央法規、2000年

内容

 この本はサブタイトル通り、ソーシャルワーク・スーパービジョンの概観をつかみ、重層的な理解を促すにはとても効果的です。スーパービジョンの理論、実践上の留意点、事例にわたるまで総合的に展開されているためです。
 とりわけ参考になったのは、「V章 スーパービジョンの実践」の「第1節 スーパービジョンの構造」にある「表2 スーパービジョンをはじめる前に確認すべきこと」(94ページ)で、実際にスーパービジョンを行うに際しての細かいポイントがわかり、スーパーバイザーとしての心構えをつくる上で役立ちます。また、「第8章 事例検討会」の「表3 事例検討会の記録」(128〜129ページ)は、そのまま記録様式として活用できそうです。私自身にとって役立ちそうなのは、「W章 スーパービジョンの事例」の「第2節 スーパービジョン研修」です。研修の進め方が載っているため、今後参考にさせていただこうと思っています。
 この本はアマゾンで中古購入したのですが、本来2,800円の定価のところ7,000円余を費やしましたが、それでも購入して良かったと思える1冊でした。


目次
T章 日本におけるスーパービジョン
 第1節 ソーシャルワーク現場におけるスーパービジョンの現状
 第2節 スーパービジョンの日本への導入
 第3節 近接領域におけるスーパービジョン)
U章 スーパービジョンの理論動向
 第1節 スーパービジョン理論の歴史的変遷
 第2節 スーパービジョン理論の到達点
V章 スーパービジョンの実践
 第1節 スーパービジョンの構造
 第2節 スーパービジョンの形態
 第3節 スーパービジョンが扱う内容
 第4節 スーパービジョンのプロセス
 第5節 スーパービジョンの技法
 第6節 スーパーバイザーとして
 第7節 スーパーバイジーとして
 第8節 事例検討会(事例を中心としたスーパービジョン)
 第9章 ピアスーパービジョン
W章 スーパービジョンの事例
 第1節 さまざまなスーパービジョン体験
 第2節 スーパービジョン研修
 第3節 ピアスーパービジョンの試み
 第4節 スーパービジョンの課題



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