原作タイトル『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎,新潮社)
映画タイトル『ゴールデンスランバー』
まずはミステリーの数々をご紹介しましょう。
私にとって「伊坂ワールド」との出会いが、この『ゴールデンスランバー』でした。最初に読んだ本であり、これまで読んだ10数冊の伊坂さんの本の中で、やはりピカイチです。
何が面白いって、「伊坂ワールド」はどこか不条理で、どこか半音ズレていて、でもそのなかでグイグイと読者を引っ張っていく筆力があり、最後は溜飲が下がるというシステムになっています(たまに下がらない作品もありますが…)。その醍醐味が、主人公の逃亡のスピード感とともに見事に描き出されているところです。
そして映画も、その軽快感を損なうことなく、堺雅人さんという少し頼りなげで優しく、いかにも罠にはめられそうな俳優を主人公にすることで、成功しています。特に、最後に主人公が公園に現れる場面では、打ち上げ花火が夜空に炸裂するシーンが映像ならではのクライマックス感を彩っており、印象的でした。また、脇を固める俳優が吉岡秀隆、劇団ひとり、柄本明、濱田岳と個性派揃いで、なかなか良い味を出していました。
この作品は、原作を先に読んでも映画を先に見ても、どちらでも楽しめるのではないかと思います。
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