今月の2冊・2008年10月 本文へジャンプ
今月は学生に人気があった2冊です。


野村 豊子、田中 尚、北島 英治、 福島 広子『ソーシャルワーク・入門』有斐閣アルマ、2000年


内容

 私が1年生を対象に、1年間担当するのが「社会福祉援助技術総論」です。ソーシャルワークの基本を伝えるのがこの講義の目的ですが、1年生なので福祉に関する基礎知識の習得や勉強へのモチベーションを高めることもねらっています。
 そんな講義での夏休みの課題は、配付した本のリストから1冊選び、概要と感想を書くことです。毎年、200人余が多様な本を読んでくるのですが、今年はなぜか圧倒的にこの本を読んだ人が多かったです。なんといってもタイトルに惹かれるのでしょうね。こちらからはどの本を読むかはまったく指示しておらず、自由に選択してもらっています。
 児童、高齢者、医療などのある特定の分野に限らず、すべての分野に共通するソーシャルワークの価値観・知識・技術を、臨床・実践理論の中から明らかにしており、図表も多く、わかりやすい内容になっています。私の講義自体が特定の分野に焦点化していないこともあり、講義の内容とリンクする部分が沢山あります。
 1年生の前期にはまだ「ソーシャルワーク」のイメージが持てないようですが、夏休みの課題に取り組むことを通して、次第に自分の中に「ソーシャルワーク像」が出来てくるようです。やはり最初はしっかりとした基盤を作ったうえで次のステップに進むのが大切ですが、そのために活用できる1冊です。


目次

序章 ソーシャルワークとは何か
第1章 ソーシャルワークの視点と方法
第2章 ソーシャルワーカーの役割と技法
第3章 個別援助の理論と技術—個人へのソーシャルワーク援助
第4章 集団援助の理論と技術—創造的なグループワーク
第5章 利用者主体と福祉援助の方法
第6章 ソーシャル・サポート・システム
第7章 福祉における健康の概念
第8章 ソーシャルワーク・リサーチの必要性
第9章 ソーシャルワークの価値観




菊池かほる『病院で困った時、何でも相談してください。~医療ソーシャルワーカーというお仕事~』作品者、2001年

内容

 次にこの夏のレポートで人気があったのはこの本。我が大学の偉大なるOG菊池さんの作品です。
 上記で「私の講義自体が特定の分野に焦点化していない」と書いておきながら、やはり医療ソーシャルワーカー出身のため、かなりその経験に依拠している部分が大きく、活用する事例も医療福祉系が多いのは否めません。その影響があったことと、やはりこの本の読みたくなるようなタイトルのために、きっと多くの学生が読んだのでしょう。
 内容も面白いです。守秘義務の都合でいくらかの事例を統合して作られたようですが、「こんなことあるよね~」と思わず頷きながら読むこともしばしば。そしてこの本を読んだ学生が決まって書いていた部分が、患者から愛の告白をされた経験についての「6 あなたが好きです」と、最後の「33の質問」についてです。やはり現場の第一線で活躍されているソーシャルワーカーの言葉は、学生たちに届くのでしょうね。
 今回改めてこの本を読んでみて、来年の講義のゲスト講師は現場で働いているソーシャルワーカーの方にお願いしようと、心に決めました。
 

目次

はじめに
ケーススタディ
 1 「医療」と「患者さん」の間に立つ
 2 病気が「治る」ってどんなこと?
 3 主人に仕返ししてるんです
 4 「神田QQ」さんのこと
 5 羊のてんこもり
 6 あなたが好きです
 7 ウソをつき通す勇気
 8 入学式は兄の靴を履いて
 9 ワーカー、結婚って良いもんよ
 10 優等生の彼女は「ヒステリー」
 11 この小娘を見返してやる!
 12 少女テレサの死
 13 今日で面接を卒業します
 14 老親が倒れた時
 15 変わりゆく夫婦の肖像
 16 キーパーソンを探せ
33の質問
あとがき





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