今月の2冊・2008年9月 本文へジャンプ
デンマーク帰りの9月は、外国づいている2冊です。


石河久美子『異文化間ソーシャルワーク〜多文化共生社会をめざす新しい社会福祉実践〜』川島書店、2003年

内容

 日本に滞在する外国人が増えてきたとはいえ、どれくらいの日本人がそれらの人たちと接した経験があるのでしょうか。私は医療ソーシャルワーカーを行っていた際に、何件かの外国人の援助を行いました。一人一人の置かれている状況や考え方の違いに戸惑いながらも、なんとか援助をした覚えがあります。
 そんなソーシャルワーカーには、この本で筆者が強調する「クライエントの社会的・文化的背景の尊重」は果たして出来ていたのか、今振り返ると疑問が残ってしまいます。そのようなトレーニングは教育課程のなかで受けてこなかったからです。
 ソーシャルワークのクライエントは日本人だけではないことを認識し、制度・政策においてもソーシャルワーカーの直接的な援助においても、多文化の視点を持つことが必要になってきていることを「異文化間ソーシャルワーク」と定義し、筆者は多面的な角度から論述しています。
 先日まで滞在したデンマークの国民学校である日欧文化交流学院では、日本人も、外国人も、知的障害がある人も、皆一緒に生活し学んでいました。そこの学生達は、互いの違いを生活のなかで自然と理解し、配慮する習慣がついていました。
 この1冊からは、日本においてそのような取り組みを行う行うためにはどうすればよいのか、「異文化間ソーシャルワーク」を目指すソーシャルワーカーにはどのようなトレーニングが必要なのかを、考えるヒントがもらえます。


目次

第1章 異文化間ソーシャルワークの必要性
1.異文化間ソーシャルワークとは
2.異文化間ソーシャルワークと日本

第2章 日本の中の異文化の人びと
1.滞日外国人の実態
2.国際結婚と国際離婚
3.国際児―2つの文化の中の子どもたち
4.難民
5.留学生・就学生
6.中国帰国者

第3章 米国・カナダにおける異文化間ソーシャルワーク
1.多文化共生社会における実践のあり方
2.米国・ハワイ州における実践
3.カナダ・ハミルトン市における実践の取り組み
4.米国・カナダにおける援助技術の分析

第4章 日本の異文化間ソーシャルワーク実践と必要とされる援助技術
1.異文化間ソーシャルワーク実践の取り組み
2.異文化のクライエントに対する援助技術―事例をとおして
3.異文化対応の支援システムの構築に向けて

第5章 異文化間ソーシャルワークと調査
1.フィリピン、ラテンアメリカ、コリアン女性への質的調査―滞日外国人女性を支援するソーシャルサービスの必要性
2.日本人と結婚したフィリピン人女性への質的調査―滞日外国人の地域社会への抱合をめざして 
3.「参加型地域社会開発」の手法による滞日外国人支援プログラムの開発―飯田市における足元からの国際化の取り組み


野村武夫『ノーマライゼーションが生まれた国・デンマーク』ミネルヴァ書房、2004年

内容

 今回のデンマーク旅行に際して読んだ本の1冊です。デンマークの概要が項目毎に綴られてあり、とても読みやすくわかりやすい本でした。デンマークに関するいくらかの知識が得られて良かったです。
 そして幸運なことに、現地で野村先生も大学生を連れて訪問されており、初対面を果たしました。野村武夫先生といえばグループワークの本でお名前は存じていたのですが、この十数年、デンマークに通っていらしたことは今回知りました。
 しかし、この本は読むだけに終わらせずに、ぜひデンマークに行く前や行った後に参考にされることをお勧めします。日欧文化交流学院校長の千葉忠夫先生の口癖でもある、「100回読むより1回自分の目で見ること」が何にも勝る勉強なのですから。
 少しお金はかかるけれど、きっとお金は後でついてきます。さあ、書を持って世界に出ましょう!!


目次

第1章 デンマークという国
第2章 世界で最も住みやすい国
第3章 充実した医療サービス
第4章 税金は高くても
第5章 大胆なエネルギー政策と環境保護
第6章 成熟した民主主義
第7章 社会を変える女性の力
第8章 世界に広がるノーマライゼーション
第9章 世界的な水準を誇る高齢者福祉
第10章 利用者本位の高齢者ケア
第11章 障害者の権利保障と行政の取り組み
第12章 一人一人を大切にする教育
第13章 デンマークから何を学ぶか―人間尊重社会への課題


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