シヴォーン・マクリーン、ロブ・ハンソン著、木全和巳訳『パワーとエンパワーメント』、
クリエイツかもがわ、2016年
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内容
私が大学教員になってから最初に書いた研究論文は、「エンパワーメント志向のソーシャルワーク教育についての考察・序論」 というタイトルでした。「序論」を書いたのに、その後「本論」が書かれていないという隠したい過去には目をつぶるとして、今でもエンパワーメントという言葉には素直に反応してしまいます。そのため、新聞で紹介されていたのを見て即購入しました。
まず最初に、様々な角度からパワーが解説されています。例えば、「パワーはどのように構築されるか?」「パワーの領域」「パワーの形式」「パワーの階層」「エンパワメントとは」等々です。例えば「パワーの形式」とは「堅いパワー」と「柔らかいパワー」がある、といった具合です(p.19)。
次に、パワーとエンパワメントがソーシャルワーク実践において、なぜ鍵になる問題となるのかが解明されています。そこでは、本質的な問いに対して次の回答を述べています。「ソーシャルワークの本質は、パワーそのものであり、……他者の生活への介入は、パワー(権力)関係のネットワークへの介入である」(p.40)。
最後は、どうしたらソーシャルワーカーはエンパワメント概念を自分の実践に適用できるか、について展開されています。ここで大事なのは、「パワー(権力)の問題は、パワーそのものにあるのではなく、パワーの責任ある使用により、いかに成し遂げるかにある」(p.73)ということに尽きるでしょう。
一つ気になったのは、タイトルは「エンパワーメント」なのに、本文中では「エンパワメント」に統一されていることです。私は論文で「エンパワーメント」を使いましたが、昨今の業界では「エンパワメント」が主流になっています。
とはいえ、とても原則的な見解が述べられており、ソーシャルワーカーのみならず教員にとっても一読の価値ある本だと思いました。
目次
1 なに?
パワーとはなにか?
パワーを定義すると
パワーはどのように構築されるのか? ほか
2 なぜ?
なぜ?
なぜ、ソーシャルワーカーは、パワーとエンパワメントへの理解を発展させていく必要があるのか?
パワーとソーシャルワーク ほか
3 どうしたら?
どうしたら
エンパワメントは、願望か、現実か
ミクロ、メゾ、マクロ ほか