三島亜紀子著『社会福祉学の〈科学〉性〜ソーシャルワーカーは専門職か?』、勁草書房、2007年
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内容
さすがにこの本は学部生の課題図書には難しいでしょうね。アドヴァンスト・コースなので、大学院生向けの本として最後に紹介します。
この本は、ソーシャルワーカーの専門職化への期待が高まるなか、「ソーシャルワーカーの専門職化へ向けた取り組みとその実践を支える理論研究の変遷をたどることで、現在ソーシャルワーカーが置かれている状況を明らかにしようとするもの」(p.ii)です。それを読み解く鍵として設定されているのが、反省的学問理論(エンパワーメント、ストレングス視点、ナラティブ理論等の新しいソーシャルワーク理論)です。
論考の出発点は福祉の研究をやっていれば誰もが一度は聞いたことがある、有名なアブラハム・フレックスナーの1915年の講演「ソーシャルワークは専門職か?」であり、次いで障害者と子どもという社会的弱者が学問の対象とされた経緯を論じ、専門家の介入のあり方に及びます。最終的には、反省的学問理論とエビデンス・ベイスト・ソーシャルワークという「実践モデルの二分化」の考察によって、現在のソーシャルワーカーの専門家としての立ち位置を論じています。
一章一章の咀嚼には、時間と背景となる知識が必要ですが、挑戦する価値ありです。社会福祉理論を勉強した大学院生にとっては、知的刺激が得られると思います。ちなみにこの本で三島先生は、第5回日本社会福祉学会奨励賞及び2007年度の日本ソーシャルワーク学会の学術奨励賞を受賞されています。
目次
はじめに
第一章 専門職化への起動 第一節 全国慈善矯正事業会議におけるフレックスナー講演 第ニ節 フレックスナー講演に先行するフレックスナー報告 第三節 「進化」する専門職
第ニ章 社会福祉の「科学」を求めて 第一節 援用される諸学問の理論 第ニ節 最初の「科学」化――精神力動パースペクティブ 第三節 ラディカルなソーシャルワーク 第四節 社会福祉統合化へむけて――システム-エコロジカル・ソーシャルワーク理論
第三章 弱者の囲い込み 第一節 障害者というまとまりの具体化 第ニ節 福祉の対象となる子ども 第三節 子どもの権利と専門家の権限
第四章 幸福な「科学」化の終焉 第一節 反専門職主義の嵐 第ニ節 脱施設化運動 第三節 新たな社会福祉専門職への再調整
第五章 専門家による介入――暴力をめぐる配慮 第一節 ソーシャルワーク理論と政治 第ニ節 理論と政治の連動――イギリスにおける児童福祉の展開・1 第三節 「自由の巻き返し」――イギリスにおける児童福祉の展開・2 第四節 自由か安全か
終 章 専門家の所在 第一節 一九九〇年代以降 第ニ節 エビデンス・ベイスト・X 第三節 反省的学問理論と閾値
参考文献 索 引
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