外岡潤著『おかげさま 介護弁護士流老人ホーム選びの掟』、ぱる出版、2011年
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内容
東大卒の弁護士であり、ホームヘルパー2級を取得、そのうえ日舞やマジックが特技で福祉施設でパフォーマンスを展開し、介護業界のトラブルを解決するイケメンときたら、そりゃあマスコミも放っておかないでしょうね。各テレビ局から引っ張りだこのようです。
筆者は、たまたま出合った『ヘルプマン!』(くさか里樹、講談社)という介護現場が舞台の漫画に魅せられ、自分も介護に関わりながら介護現場で起きるトラブル解決に特化した「介護弁護士」になろう、と決意しました。
この本では、実際に起こりうる介護現場での骨折事故の事例に基づき、どのようにトラブルが悪化していくのかという過程をわかりやすく展開しています。架空の事例ではありますが、「いかにもありがちだな〜」と思うことしきり。最後は訴訟に踏み切るかどうかまで行くのですが、そこで事態は一転…という流れです。
2000年の介護保険施行後から介護現場でも権利擁護システムが導入されてはいますが、まだまだ利用者の立場は強くないなかで、法曹に携わる専門職との連携が求められる場面も多くなることでしょう。このような介護現場に理解ある弁護士が増えることは、介護職・相談職にとっても心強いことだと思いました。
巻末では、外岡さんとくさかさんが対談しており、読み物としても面白かったです。こんな若者が介護現場でどんどん活躍してほしいと、願わずにはいられません!
目次
序章 「おかげさま」と和の心
〜介護業界のトラブルは他人事ではすまされない〜
第1章 とある家族の物語
〜誰も知らない、老人ホームの落とし穴〜
第2章 落とし穴を避けるには
〜介護弁護士が教えるホーム選び五つの掟〜
第3章 『ヘルプマン!』と私
〜『ヘルプマン!』の名場面に見る、介護の可能性〜
最終章 介護弁護士として私が目指すもの
〜「おかげさま」に込めた思い〜
巻末対談 エンターテイメントとしての介護の可能性
〜介護弁護士 外岡潤×『ヘルプマン!』漫画家 くさか里樹〜