木慶子著『悲しんでいい〜大災害とグリーフケア〜 』、NHK出版新書、2011年
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内容
ある日本屋に行ったら、大震災関連の本のコーナーができていました。いまだに津波の映像を見ると気分が悪くなる私は、心身の状態に自信がなく、被災地に足を運ぶことができません。それでも、何かしなければ、せめて状況を知らなければと、手に取った本がこの本でした。
まるで砂が水をしみこむように、この本は私の感受性にしっくり馴染み、心地よく、癒されていくのがわかりました。木先生の心根が、活字を通して伝わってくるようでした。そして、同じ喪失体験でも実は病気と大震災では異なる性質があることも知りました。
今、全国の学校で震災ボランティアが奨励されていますが、ボランティア希望者や教員にぜひ読んでいただきたいのは、「ボランティアの心得」(p.200〜)です。活動中はくれぐれもセルフケアに気をつけること、現場では相手のニーズに合わせること等々が分かりやすく書かれてあります。決して、単位のためでなく、自分だけのためでもなく、ボランティアは続けられなければなりません。
ボランティアに行くこともできない私が書くのは何ですが、ぜひ、行かれる方は事前準備を怠りないよう、お願いしたいと思っています。その際に、まずこの本を読むことをお勧めします。
目次
第1章 「癒しびと」なき日本社会
第2章 心の傷は一人では癒せない
第3章 弱っている自分を認める勇気――悲しみとのつきあいかた
第4章 「評価しないこと」と「口外しないこと」――悲しみへの寄り添いかた
第5章 老若男女、それぞれの喪失体験
第6章 小さな希望でいい―三つの言葉と三つのモットー―
終章 ほんとうの復興のために