今月は「援助」とは何かについて示唆を与えてくれる2冊です。 |
古川孝順・岩崎晋也・稲沢公一・児島亜紀子著『援助するということ〜社会福祉援助を支える価値規範を問う〜』、有斐閣、2002年
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内容
今年最後の2冊は、「援助」について考えるための本です。
何年かソーシャルワーカーを行ってきた私が、「援助を行うなかで何を学んだの?」と聞かれたら、「利用者さんと同じ目線で関わること」と答えるだろうと、教員になったばかりの頃は思っていました。でも、「同じ目線って何?」と聞かれたら、感覚的なことしか言えない自分がいるのです。
それについて、この本を読んだ7年前にスッキリ説明してある箇所を発見し、「そうそうその通り!!」と膝を打ったものです。それは稲沢先生が書かれた「第3章 援助者は『友人』たりうるのか―援助関係の非対称性―」に述べられていました。
「一方的に苦しみをかかえている人がいる。援助者はそうした苦しみを前に逃げ出すことができる。それこそが援助関係に伴う非対称性を根源的に形成している。結局、苦しみを前にして『逃げられない者』と『逃げられる者』との相違こそが非対称性の正体なのである。しかし、逃げることができるということは、逃げられない決意を引き受けることもできるということを示してもいる。見捨てることができるからこそ、見捨てないという選択が存在しうるように。」「すなわち、それは、単なる構造的な枠組みとして与えられただけの非対称性(=『逃げられない者』と『逃げられる者』)を新たな非対称性(=『逃げられない者』と『逃げない者』)へと変換し、二者間の関係性をあらためて主体的に取り結ぶことなのである」(p.191)。
援助関係のみならず、現在の教育場面においても生じている対象者との「非対称性」。社会人になって以降、ずっとどこかしらこのテーマと向き合ってきているのかもしれないなぁ、と思いました。
目次
第1章 社会福祉援助の価値規範―社会と個人の交錯するところ(古川孝順
はじめに
1 援助活動の社会的基盤
2 社会福祉の二つの機能―社会的機能と福祉的機能
3 社会福祉の利用者観
4 援助活動の近代化
5 福祉改革と援助活動
6 ソーシャルとケースの間
第2章 なぜ「自立」社会は援助を必要とするのか―援助機能の正当性(岩崎晋也)
1 はじめに―問いの所在
2 「自立」を求める社会
3 「自立」と対立する援助
4 集合的利益を拡大するための援助
5 福祉国家における援助の特質
6 福祉国家への懐疑
7 「自立」社会の再編と援助
8 おわりに―新たな「社会連帯」の可能性にむけて
第3章 援助者は「友人」たりうるのか―援助関係の非対称性(稲沢公一)
はじめに
1 リッチモンドの提起した問題
2 ロジャーズとブーバー
3 「我―汝」関係
4 援助関係と「我―汝」
5 援助関係の非対称性
6 クライエントに内在する「力」
7 自己目的的な援助関係
8 援助関係と友人関係
9 社会福祉実践の援助関係論に向けて
第4章 誰が「自己決定」するのか―援助者の責任と迷い(児島亜紀子)
序
1 社会福祉援助領域における各行為主体の関係
2 <自己決定>が呼び込んだ誤認/駆り立て
3 自由主義の桎梏
4 法/掟に呼びかけられる主体
5 他者の<顔>―呼びかけと責任
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