今年から新ページ作成の負担を軽くするため、2ヶ月に1回3冊を紹介することとします。 |
杉本貴代栄・岡田朋子・須藤八千代編著『ソーシャルワーカーの仕事と生活―福祉の現場で働くということ 』、学陽書房、2009年
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内容
医師や看護師、教師と聞くと、その仕事内容がイメージしやすいのですが、ソーシャルワーカーとなるとイメージが沸きにくいようです。また、社会福祉学部の新入生ですら社会福祉の仕事から想像するイメージを聞くと、「介護」「大変そう」「人のための仕事」という言葉は出てくるものの、それ以外には膨らまないのが現状です。
日常的にソーシャルワーカーに接していないことや、接していたとしてもその人をソーシャルワーカーと認識していないことが要因として挙げられるでしょう。
そんな現状に一石を投じたいと、活躍するソーシャルワーカー像を示す試みを数年にわたって行ってきましたが、今では多岐にわたるソーシャルワーカーの仕事について紹介してある本が増えてきました。今回はそんな3冊の本を紹介します。
この本は、各分野で働くソーシャルワーカーの姿を事例を交えながら紹介してあります。全体を通してみてみると、つくづくソーシャルワーカーの守備範囲は多岐にわたっていること、それゆえに分野特有の知識や技術、利用者への接し方があることがわかります。
しかしながら、多分この本を執筆した多くのソーシャルワーカーは「『人を援助する』という仕事、『人が人を支える』仕事を生き方として選んだ自分は、本当に幸せであると痛感する。ソーシャルワーカーとは、人が生きることを支えつつ、自身が生きることと向き合う機会に恵まれる、比類ない仕事である」(p.212)という、共通の思いを持っているのではないでしょうか。
2004年に出版された『私はソーシャルワーカー』(杉本貴代栄・須藤八千代編、学陽書房)もあわせて読みたいものです。
このような本が多く出版されたり、メディアで取り上げられることにより、さらに多くの人にソーシャルワーカーを知ってもらうことにより、困ったときにはいつでも相談できる場所があるのだという認識を高めてもらうことが大切だと思います。
目次
1 理論編
ソーシャルワーカーという仕事
ソーシャルワーカーを導く知
生活支援とソーシャルワーカー
2 現場編
貧困と生活
児童・青年
障害者
女性・ひとり親
高齢者・地域
医療
国際社会・グローバル化する課題
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上野仁美著『精神科ソーシャルワーカーの棚卸し―疲れた猫の捨て台詞』、文芸社、2004年
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内容
精神科ソーシャルワーカーを行っていた筆者が、仕事の中で出会ったことと感じたこと、日常生活での思い、昔の思い出などを綴ったキラキラしたものが沢山入っている宝石箱のような本です。エッセイの合間合間に精神科ソーシャルワーカーに関連するQ&Aが掲載されており、エッセイの内容をより深めることができます。
なかでも私が好きなのは、 「ソーシャルワーカー上野さんの長い午前」「ソーシャルワーカー上野さんの終わらない午後」です。昔から援助技術のテキストを読んでいて常々物足りなかったのは、ソーシャルワークの知識や機能等が綺麗に整理されすぎており、それらを実在のソーシャルワーカーがどのように統合して活用するのかという姿が見えてこないことでした。
その点、この2つの項は精神科ソーシャルワーカーの1日の仕事の詳細を時系列で記述してあり、動いているソーシャルワーカーの姿が生き生きと示されています。「こんなことあるよね~」と思わず頷いてしまう場面もしばしば登場します。
筆者の上野さんとは、以前ご一緒に東京社会福祉士会の活動を行ったことがありますが、とても聡明で華のある素敵な女性でした。
目次
ぶう!! ―はじめにかえて
壱ノ章 三むかし
妹不要論
子ども心に・・・ザマアミロ
私の師走物語
庭の実
餌付け
悲しみは優しさの栄養素
え~!! 私はPSW!?
ソーシャルワーカー上野さんの長い午前
ソーシャルワーカー上野さんの終わらない午後
変わり得ることが変わらないこと
弐ノ章 二むかし
着物を買う
十三夜の餅
子猫
保護室
変わらない力不足
最後の言葉
小さな隙間
不思議なトコロ
自立
お掃除のオバサン
お仕事、や~めた!!
参ノ章 一むかし
私の夢は、季節の中で…
マンションのスズメ
主婦のルール
親子関係
フィガロ
平日の午後
本気で蹴りたい背中
気分転換
働きアリ
時が流れた先に
結婚はビジネスだ―おわりにかえて
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柴田純一著『プロケースワーカー100の心得』現代書館、1999年
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内容
目次が長い!!だって、福祉事務所のケースワーカーの100の心得が目次になっているので、100項目あるのですから。目次を書き込んでいて「これは何ぞや?」と目が留まったところをご紹介しましょう。
「009ケースワーカーとは、ビジネスマンのことである」。ケースワーカーとは実社会、つまりビジネス社会の中で仕事をする人のことであり、ビジネス社会の礼を失ってはならないことを書いています(pp.33-34)。例えば、「言葉遣いに気をつけなければならない」「約束の時間をまもらなければならない」「お客さまを大切にしなければならない」等々。
「093ケースワーカーはほんの少し抜けた顔ができるといい」。「すべての仕事の時間を通して、ぴりぴりと張り詰めた顔をしてはならない。目から鼻へ抜ける利口そうな表情はしないほうがいい。むしろ、少しぼんやりした明るい顔で、それでもしっかり話を聴いているということがときどき相手にわかるくらいがよい」(p.206)そうです。その他にも、ケースワーカーとしての知識とノウハウが沢山詰まった興味深い1冊です。
著者の柴田純一さんは、私が右も左もわからない東京に単身で上京した時に参加した、東京社会福祉士会の研修委員長でした。研修の企画・運営の仕方や研修講師とのネットワーク作りだけでなく、仲間と一つのものを作り上げていく醍醐味を教えてもらった人生の大先輩です。その時に参加していた研修委員会が、私のこれまで参加した数多のグループのなかでも、楽しくて知的刺激にあふれた最高のグループといえるものでした。
目次
第Ⅰ章 ケースワーカーとは、何をする者のことなのか
001ケースワーカーとは、制度を適用する者のことである
002福祉とは制度のことと心得ること
003まず自分をケースワークする
004ケースワーカーとは、その場に身を置く者のことである
005ケースワーカーとは、事実を認定する者のことである
006ケースワーカーとは、調査員のことである
007ケースワーカーとは、自己決定を助ける者のことである
008ケースワーカーとは、話をまとめる者のことである
009ケースワーカーとは、ビジネスマンのことである
010ケースワーカーとは、人の生活を支える者のことである
第Ⅱ章 プロケースワーカーの正しいやり方
011とにかくあわてることはない
012面接とは人の話を聞くことである
013初めに自己紹介すること、やさしい言葉を使うこと
014受容とは、相手の言いなりになることではない
015心は目に表れる、面接の前に鏡を見る
016Yes・noを言わせない noで答えるな
017本を探せ、日々これ勉強。情報は日々更新せよ
018本人の提供する情報から調査を開始する
019初めに基礎的ニーズを把握する
020書類を集めることが仕事ではない
021福祉事務所とは事実の先行するところである
022ケースワーカーの仕事は交通整理だ、流れていく道をつけること
023福祉六法に精通すること
024個別化というのは一般化しないこと、簡単に「専門知識」で納得しないこと
025アルコール依存症かどうかは医師が言えばいい。
住民登録がどうしてないのか、ケースワーカーの守備範囲だ
026オーダーをとる前にメニューを見せる
027手持ちの資料の中に新しい事実がある
028あることは証明できる、ないことは証明できない
029わかろうとしていることが、わかればいい
030関係者には、初めに手紙を書くとよい場合がある
031訪問するときは予め連絡をする
032病院訪問は、面会時間に行くとよい
033訪問したら、その家の人全員と話をする
034「ケース」の見方は何回変えてもいい
035「住所不定」の人には「家はどこですか」と尋ねる
036精神病の人にも、本当のことを言うべきだ
037相手が❍暴のとは、まずこちらの動作を太くする
038ケースワーカーとは、金の出し入れをする者のことである
039レセプトを見ながら仕事をする
040ケースワーカーとは、情報を管理する者のことである
041何が起きても自分のせいではないと思うこと
第Ⅲ章 生活保護法の解釈と運用をめぐる覚書き
042実施要領に精通すること
043生活保護法は二重構造になっている
044急迫した状況は、その人の身になって考える
045保護とは、扶助だけのことではない
046申請はFAXでも有効である
047MSWからの電話を申請とみなすべきときがある
048挙証責任はこちら側にあり、申請者側に協力義務がある
049福祉事務所には出かけていく義務がある
050生活保護を受けることが自立になる場合もある
051自立を保護の要件と解してはならない
052二種類の指導・指示がある
053できないことを指示してはならない
054クーラーを持っていても保護できる
055世帯単位原則より、補足性原理が優先する
056推定される同一世帯では、これを拒否する場合申請者側に挙証責任がある
057扶養義務者には、直接会って話をする
058稼動能力を「有り」「無し」で考えないこと
059稼働能力とは、取引の結果のことである
060「あるべきこと」は「できること」ではない
061住所不定を理由に保護を拒否してはならない
062住所不定の人に敷金を出すときは、不動産屋までついていく
063費用返還義務規定の適用は、新たな処分である
064処遇方針を決められない人がいてもいい
065他法優先とは勝手に障害年金を申請することではない
066ケースワーカーが何でも代行しなくていい
067名刺代わりに基準額表を渡すとよい
068辞退届けとは、お互いに得するときに使うもの
069実施要領にないことは、やっていいということである
070ケース記録は短めで、にぎやかなほうがいい
071現場に事実認定権がある。自分に証明力を与えよ
072保護要件を満たさなければ、保護できなくても仕方ない
073争いになってもいい
074病院を選ぶことも医療扶助のうちである
075ケース診断会議とは儀式である
第Ⅳ章 したたかに現場で生き抜く法
076仕事が楽になる工夫ならいくらしてもいい
077何でも生活保護で解決しようと思ってはならない
078訪問先は密室である
079頑張ってはいけない、大変な仕事にしてはいけない
080全ケース、均等に仕事をしなくていい
081自分の決定は機関の決定だと思うこと
082勝手に環境に働きかけなくていい
083ケースワーカーとは、その人の側に立つ者のことである
084自分のネットワークをつくる
085家に帰っても仕事を忘れてはならない
086いつも営業マンであれ
087「その時」を活かす人であれ
088監査官に「反論」してはならない(その1)
089監査官に「反論」してはならない(その2)
090監査官に「反論」してはならない(その3)
091不愉快なときは感情を出していい
092仕事が嫌な日は考える人になれ
093ケースワーカーはほんの少し抜けた顔ができるといい
094訪問の行きと帰りは別の道を通る
095研究会をつくって、議論しながら仕事ができるとよい
096ケースワーカーの仕事を独立して営む事業主であれ
097常に事業化・予算化を考える
098ケースワーカーとは、自分を知る者のことである
099自分の職業はケースワーカーだと思うこと
100ケースワーカーとは、社会福祉の理論を持つ者のことである
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