今月の2冊・2009年7月 本文へジャンプ
今月は知り合いの書いた2冊の本を紹介します。


『支援者のためのアサーティブコミュニケーション~ソーシャルワーカー・ケアマネージャー・社会福祉の現場で働くあなたへ~』、特定非営利活動法人アサーティブジャパン、2009年


内容

 先月はソーシャルワーカーのジレンマと、対処法としての交渉術の本を取り上げましたが、今月は対処法の一環としてアサーティブコミュニケーションのブックレットを紹介します。
 アサーティブネスとは「相手を攻撃することもなく、卑屈になって黙ることもなく、自分の考えや気持ちを相手にしっかりと伝えるためのコミュニケーションの考え方と方法」で、「私たち一人ひとりの『考える権利』『感じる権利』『表現する権利』を尊重する、率直で対等なコミュニケーションのあり方」(p.10)です。
 コミュニケーションの力によって仕事を行っていくソーシャルワーカーにとっては、ぜひとも習得したい方法の一つといえるでしょう。いやいや、教師も含めた対人援助職全てにとって必要な方法です。特に「第2章その3 上手に注意する」方法は、今後ますます必要になってくるのだろうなと思い、頷きながら読みました。
 この本の執筆者の一人である竹沢昌子さんとは10年来の知り合いで、何度か一緒に本を作ったことがあります。アサーティブトレーナーである彼女は、いつもアサーティブコミュニケーションをしていたのだな~と、改めて思いました。
 市販品ではないので、アサーティブジャパン(http://www.assertive.org/d/d_1_10/index.html)に問い合わせるといいでしょう。


目次

はじめに

第1章 アサーティブネスとは

第2章 職場で話し合いのできる関係をつくるために
その1 頼みごとをする・相談する
その2 はっきり断る
その3 上手に注意する
その4 批判への対処法

第3章 支援者としての自分を大切にする
その1 コミュニケーションにおける権利
その2 ほめ上手・ほめられ上手になる
その3 自己信頼を築く

第4章 ソーシャルワーカーによる体験記
1 支援者自身が自分自身を大切にすること
2 よりよい支援のために

おわりに


蟻塚昌克著『証言 日本の社会福祉 1920~2008』ミネルヴァ書房、2009年


内容

 私の斜向かいの研究室の蟻塚先生が、ご本を出されました。タイトルのとおり日本の社会福祉の源流の一角を照らし出すために、何人かの人物や記録に焦点を当てた第Ⅰ部と、第二次世界大戦後の社会福祉行政に関わったキーパーソンの聞き書きによる第Ⅱ部から構成されています。
 なかでも面白かったのは、「第5章 サムスの夢と紙芝居『黎子物語』」です。戦後、GHQの命を受け保健所に医療社会事業家(医療ソーシャルワーカーの前身)が置かれたのですが、その役割を住民に啓蒙するために「黎子物語」という紙芝居が作られました。この本には、絵とセリフの全編が掲載されています。
 秘密が守られる個室で経済的な困難を抱えている人の相談にのり、生活保護や施設のサービスの情報提供を行い、家庭訪問を行い、民生委員と連携をとるなど、この頃の医療社会事業家に期待されていた機能が、現在と大きく隔たらないことに驚きと感銘を受けました。
 歴史を紐解くと、意外な宝物「セレンディピティ」に出会えることを教えてくれる興味深い1冊です。
 


目次

第1部 社会福祉の源流をさかのぼる
第1章 1938年灘尾弘吉『社会事業行政』を読む

第2章 マッカーサー元帥への手紙と『起ちあがる人々』

第3章 身体障害者福祉法の制定—Helen Keller’s Visit to Japan

第4章 福祉専門職教育の出発

第5章 サムスの夢と紙芝居「黎子物語」

第6章 1949年 黒木利克『アメリカ社会事業通信』を読む)

第2部 聞き書き—歴史の重層と現代の社会福祉
第1章 戦後社会福祉史の註解

第2章 聞き書き—板山賢治+炭谷茂+京極高宣


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