谷富夫編『新版 ライフヒストリーを学ぶ人のために』世界思想社、2008年
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内容
やはり10年ほど前に初版本を読んだ時に、ライフヒストリー法とはなんて面白い手法なのだろうと思いました。現代社会の異質化、生活世界の多元化が進む中で、その現状の一端を個人の内面から読み解く手法であり、まさにその個人の生活史という「対象を通して調べる」ことができる、広がりを持った手法だからです。
そして、異文化を対象として内面からの理解しようとするとき、より効果が発揮できる方法と謳われていることを裏付けるがごとく、本書のなかには様々な状況にある人達のライフヒストリーが綴られています。沖縄出稼者有り、在日韓国・朝鮮人有り、都市下層の寄せ場に住む人々有り…。いずれも迫力のある内容ばかりです。
なかでも「10高度医療に見られる生と死―患者のケースヒストリーより」などは、医療現場で活躍するソーシャルワーカーにとっても実践研究の参考になるのではないでしょうか。
以前、ソーシャルワーカーの生活史を捉える調査研究に数年間取り組んでいましたが、またいつかその原点に戻りたいなぁと、今回改めて本を開いて思いました。
目次
はしがき
I ライフヒストリーで社会を読み解く
1ライフヒストリーとは何か
2ライフイストリーの可能性
II 越境者のライフヒストリー
3沖縄出稼者と定住―異文化接触と同化過程
4在日韓国・朝鮮人の「世代間生活史」―ある家族の階層移動
III 都市的世界のライフヒストリー
5都市下層と生活史法
6文化住宅街の青春―低階層集住地域における教育・地位達成
7企業家と地方都市―石橋正二郎の生活史
IV 性・民族・医療とライフヒストリー
8ライフヒストリー研究におけるジェンダー
9在日コリアンの子どもたち―生活史調査に見る仲間形成
10高度医療に見られる生と死―患者のケースヒストリーより