第二の故郷に帰った日 本文へジャンプ
10年ぶりに美浜の海を見た思い出です。


 私の目の前には、海苔網が等間隔に並んでいる海が広がっていました。右端にはうっすらと対岸の半島が見え、左側には真っ直ぐに水平線がのびています。
 肥えたカモメが低く飛び、時折、漁師さんの車が海岸線を行き来しています。

 この美浜の海には、実に10年ぶりにやってきました。何度もこの県に足を運んでいながら、名古屋から1時間のこの場所まで足を伸ばす機会をずっと逸していたのですが、ホームページで学生時代のエッセイを書くにつれ、自分のなかで美浜の海を見たい気持ちが高まっていきました。
 
 そしてとうとうやってきました。
 知多奥田の駅から海までは、歩いて20分くらいかかります。途中、昔よく買っていたお菓子屋さんで昔と同じ味のクレープを買い、昔住んでいた海から5分のアパートに立ち寄り、ようやく海に着きました。
 もう卒業して20年も経つのに、アパートの様子も周りの様子も、本当に変わらないことに驚いてしまいました。このあたりの時間は、東京よりゆっくり流れているのでしょうか・・・。

 海を見ていると、20数年前にタイムスリップしていきます。いろんなことで行き詰まり心が疲れたら、早朝に海に来て心の洗濯をしました。
 1時間程、何をするわけでもないけれど、海を見ているうちにスッキリして帰っていったものです。たまに、海を見ながら詩を作ったりもしました。

 そんな美浜は、私にとって第二の故郷です。
 まだ福祉がマイナーな時代に、全く眼中に無かった大学に、何かに導かれるようにして入学しました。それも、高校で進路指導を行っていた教員の父が、自宅に持って帰った大学のパンフレットを見たからです。
 パンフレットのなかには、美浜の海でバレーボールをしている学生達の姿が載っていました。本当に当時の青春ドラマそのもののワンシーンで、そのパンフレットを見たときに、無性にこの大学に入りたいと思ったのです。
 
 そして入学した私は、沢山のものを得ました。福祉の道も、研究の道も、かけがえのない人たちとの出会いも…。
 そんな私の原点ともいえる美浜は、20年前と全く同じ温かさで私を迎えてくれました。
 半時を過ごした後、「またいつか来るからね」と、後ろ髪ひかれながら海に別れを告げました。

                                     (2009/06/26)

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