今月の2冊・2008年6月 本文へジャンプ
ここでは、2008年6月の2冊(専門領域、隣接領域の本)をご紹介します。



ゾフィア・T・ブトゥリム著、川田誉音訳『ソーシャルワークとは何か〜その本質と機能〜』川島書店、1986年


内容

 ソーシャルワークの全体像と本質が知りたい時に開くことで、心に語りかけてくれる本です。「社会的機能のある側面がその人にとってどのような意味をもつかに焦点をあててかかわるのがソーシャルワークである。ソーシャルワークがこのようなものとして認められるのは、状況のなかで人びとの果たすべき固有な課題と、課題に立ち向かう対処能力に、とくに注意を払うからである」(p.11)。
 そして 「ソーシャルワークは価値を担う活動」(p. 210)であり、3つの価値前提のもとで実践を行います。
「人間尊重」人間のもって生まれた価値によるもので、その人が実際に何ができるかとか、どのような行動をするかということとは関係がない。
「人間の社会性」人間はそれぞれに独自性をもった生きものであるが、その独自性を貫徹するのに、他者に依存する存在である。
「変化の可能性」人間の変化、成長および向上の可能性に対する信念から生じている。
 ソーシャルワーカーから教員になった今でも、私はこれらを念頭に置いて仕事をしています。
 私がこの3点と同時に必ず思い浮かべるのが、元師匠であり今も心の師である川田誉音先生の姿です。私も先生のように、いつまでも輝く女性研究者でありたいと思うのでした。


目次


第1章 ソーシャルワークのアイデンティテォ
第2章 ソーシャルワークの実践モデル
第3章 ソーシャルワークにおける価値
第4章 ソーシャルワークにおける知識
第5章 ソーシャルワークの過程
第6章 ソーシャルワークと社会
第7章 今日のソーシャルワークの問題と将来への課題



マジョリー・F・ヴァーガス著,石丸正訳『非言語コミュニケーショ
』新潮選書、1987年


内容

 すでに刊行されてから20年以上が経つ、古典の域の1冊です。非言語コミュニケーションについて、ボディ・メッセージから色彩、装い、シンボル・マークまで、あまねく紹介していて楽しんで読めます。
 なかでも感心したのは、非言語により伝わりやすい感情と伝わりにくい感情があることを、実験結果を用いて紹介している点です(5 周辺言語の伝えるもの)。それによると、正確に伝わる比率が高いのは「怒り」「不安」「悲しみ」等々。混同されがちなのは「恐怖」と「不安、「悲しみ」と「愛情」、「愛情」と「同情」等々。こちらが同情の意をもって接しているのに、愛情と勘違いされることもあるってことですね。気をつけなくちゃ。
 さらに、就職面接の決め手になる目の使い方、なんてのもありました。話し手(面接を受けて質問に答えるあなた)が相手(面接官)をどれだけ見るか(注視率)によって、相手に与える印象が変わります。注視率15%の話し手は、冷たい、悲観的、用心深い、未熟、鈍感等々の印象を与え、注視率80%の話し手は、親近感あり、自信たっぷり、自然体、円熟、成熟等の印象を与えます。就職活動中の人は、相手を注視しましょう!!
 日頃、あまり気に留めていなかった非言語コミュニケーションに着目することで、いかに情報量が多くなるかを教えてくれる本です。


目次

1 ことばならざることば
2 ボディ・メッセージ
3 動作と表情
4 目の使い方
5 周辺言語の伝えるもの
6 沈黙の世界
7 触れ合いの諸相
8 空間と距離
9 時の流れの中で
10 色彩と人間
11 ことばよりも強く




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