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今回は海ではなく川の話です。 |
私が10年間住んだ愛知県をあとにしたのは、20代も終わりの頃でした。
たまたま知り合いが勤めていた東京の病院から声がかかり、即座に東京行きを決めたのです。
田舎で生まれ育った私にとって、東京はやはり憧れの地でした。
でも、兄と知り合いがいるくらいで、他には友達はいません。
そのため、引っ越した当初はホームシックにかかってしまい、毎日寂しくて寂しくてしかたありませんでした。まだ転職先で仕事を始めるまでには、1週間も間がある頃です。
そんなある日、私は家の近くの浅草を散策していました。そして、隅田川沿いのビルの最上階のイタリアンレストランに上り、お昼ご飯を食べることにしました。
窓際の席に座った私の眼下に広がっていたのは、真っ青な空と隅田川、そして高層ビルが果てしなく続く「東京」でした。
その時、「本当に東京に来ちゃったんだな」と、初めて自分が東京に来た実感がわいてきました。
その時の気分は、ホームシックではなく、東京で一旗上げてやろうという壮大なものでした。隅田川を見ていると、なんだか力が沸いてきたのです。
そして、今日が私の第二のスタートだとひしひしと感じたのでした。
それから十年以上経ち、東京で嬉しいことも悲しいことも山のように経験しました。そして徐々に、東京でのネットワークが広がり、大学教員の職を得て、生活が安定してきました。
そんな私が、今も隅田川を見るとふと思うことがあります。
あの頃の私が持っていなくて、今の私が持っているものは何?
あの頃の私が持っていて、今の私が持っていないものは何?
ただ一つ変わらないことは、あの頃も今も「納得のいく生き方」をするために全速力で生きているということ。
大好きな隅田川は、今も私を支えてくれています。
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