綾屋紗月・熊谷晋一郎著『つながりの作法〜同じでもなく違うでもなく〜』、NHK出版 生活人新書、2010年
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内容
フェイスブックでお友達が紹介していた記事で熊谷晋一郎さん(小児科医)のことを知り、読んでみました。アスペルガー症候群の綾屋さんと脳性まひの熊谷さんという障害当事者が、世界や他者との「つながり」に困難をかかえて生きながら体験し、感じたことを書いた本です。二人とも東京大学出身のエリートです。
綾屋さんはアスペルガー症候群ゆえに、「自分の身体の内側からの思い思いの訴えも大量に聞き、身体の外側からのバラバラな情報も、感覚飽和が生じるほど、細かく、大量に受け取る」(p.21)日々を過ごしており「つながらない身体のさみしさ」を抱えています。一方、熊谷さんは痙直型脳性まひで、「一つの筋肉が緊張すると、ほかの多くの筋肉も一斉に緊張してしまうという特徴」があり、「身体の各部位同士のつながりが強すぎると、一つの小さな動きをしたくても、全身運動をしてしまって疲れやすいことが問題になる」(p.47)という「つながりすぎる身体の苦しみ」を抱えています。
この二人が自らの経験から当事者研究の可能性を探り、つながりの作法を提案しています。項目だけだとわかりにくいのですが、つながりの作法は次の4点です。@世界や自己のイメージを共有すること、A実験的日常を共有すること、B暫定的な「等身大の自分」を共有すること、C「二重性と偶然性」で共感すること(p.156)。項目の詳細については、本書をお読みください。
ちょうど私自身が発達障害を持つ人への対応に悩まされているところだったので、アスペルガー症候群の理解を深めるのに役立つ1冊でした。
目次
第1章 つながらない身体のさみしさ
第2章 つながりすぎる身体の苦しみ
第3章 仲間とのつながりとしがらみ
第4章
当事者研究の可能性
第5章 つながりの作法
第6章 弱さは終わらない
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