保正友子編集代表・浅野慎治・市原章子・國吉安紀子・榊原次郎編・一般社団法人千葉県医療ソーシャルワーカー協会編集協力『49の実践事例から学ぶ 医療ソーシャルワーカーのための業務マネジメントガイドブック』、中央法規、2023年 |
※日本ソーシャルワーク学会第136号に書いた記事を掲載します。
内容
2023年4月に、医療ソーシャルワーカー(MSW)と一緒に本書を出版しましたので、ご紹介させていただきます。
現在、多くの中堅・ベテランMSWが業務マネジメントで悩んでいます。私はMSWの業務マネジメントとは「スムーズで効果的な相談援助業務を実施するため、多様な資源を活用し、そこで働くメンバーにとっての場をつくり育てていき、メンバーが生き生きと動いていけるような営み」(p.5)と定義しました。従来の「管理運営」の考え方よりも、さらに躍動的で可変的なニュアンスで捉えた方が現実に即していると考えたため、伊丹敬之1)やミンツバーグ2)の定義を参考にしています。
実は多くのベテランMSWは、すでに各所で優れた業務マネジメント実践を展開しています。しかしながら、それらの取り組みが個々バラバラで組織内に埋もれており、まとまった形で世に出ていません。そこで、一書に編纂して世に出すことで、多くの中堅期以降の方々の参考にしていただきたいというのが、出版の動機になりました。
本書は、私がコンサルタントとして関わって作成した、千葉県MSW協会のマネジメント・ルーブリック3)の枠組みを活用し、実践・教育・管理・運営の4項目に沿って、30人のベテランMSWにより49のマネジメント事例を紹介しました。49事例を分析してみると、ベテランMSWのトップマネージャーは3つの動きをしていました。@「仕組みづくり」「新たなチャレンジ」「組織文化の醸成」がキーワードのトップマネージャーとして躍動すること、A「言語化」「可視化」「ネットワーク化」がキーワードのトップマネージャーとして基盤を耕すこと、B「理想のMSW像を持つ」「MSWの醍醐味を示す」「学び続ける」がキーワードのトップマネージャーとして自分を磨くことです。どなたの事例からも、生き生きとした息遣いが伝わってきました。
全国的に活躍している執筆者の事例ばかりですが、その取り組みを参考にしていただくことは可能です。本書がMSWに留まらず、ソーシャルワーカーの業務マネジメントの充実に資すれば幸いです。
<引用文献>
1)伊丹敬之(2013)『場の理論とマネジメント』東洋経済新報社
2)ミンツバーグ,池村千秋訳(2011)『マネジャーの実態―「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』日経BP社
3)千葉県医療ソーシャルワーカー協会ホームページ http://www.chiba-swhs.jp/category/%e3%83%ab%e3%83%bc%e3%83%96%e3%83%aa%e3%83%83%e3%82%af/
目次
第1章 医療ソーシャルワーカーと業務マネジメント
第2章 業務マネジメントに求められる能力とは
第3章 ソーシャルワーク実践のマネジメント事例
第4章 ソーシャルワーカー教育のマネジメント実践
第5章 業務管理のマネジメント事例
第6章 研究のマネジメント事例